第1章

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彼女が子供を産む前まで僕はずっと彼女の側を片時も離れなかった。 そんなとき彼女は言っていた。 「子供の名前は、夏輝と冬輝にしてね。それぞれ個性をもち、光のようにそれぞれ輝いてほしいから。」 心の中であぁ、君らしいと思う。 「でも、名前負けしてしまわないかい?」 すると彼女は僕に微笑みながら言うんだ。 「あなたが名前負けしないように育てるの」 涙がでてきた。それはとても暖かい涙。 「僕には…難しいよ」 「ごめんね。こんな大変な事を頼んでしまって。でもあなただから。あなたなら安心してちゃんと2人を育ててくれると思ったから」 僕は彼女の手をそっと握りながら 強くなりたいとそう思ったんだ。 そして彼女は僕とふたつの小さな命を置いて帰らぬ人となった。 お金では彼女の命は到底1億あっても買えなかった。
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