魔界への入り口

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そして、もう一つの主人の違和感に気付いた。こめかみのあたりに、皮膚の爛れがあるのだ。 「どうしたの?その顔。火傷でもしたの?」 私が心配すると、主人は不思議な顔をした。 「いや?べつに?」 「別に、って。こめかみ、凄い爛れじゃん。」 家に帰った時に、こんな爛れ、あったっけ? 鏡を見るように主人にすすめ、鏡を見た主人は言った。 「なんともないけど?」 「なんともないって、爛れてるってば。明日、病院に行けば?」 主人は怪訝な顔をしながらも、ああ、と生返事をした。 私は寝る前に、今日の出来事と主人の異変について考えると、眠れなくなった。 何かがおかしい。 ぐちゃぐちゃとトマトを咀嚼する主人の姿が禍々しく見えた。 あれは、ほんとうに、私の主人なのだろうか? そんなバカな考えすら頭をもたげてきたのだ。どこから見ても、主人でしかないじゃない。 私は考えても仕方ないと思いつつも、考えずにはいられなかったのだ。 いつの間にか、朝方、眠っていたようだ。 寝不足の体を起こし、私は朝食を作るためにキッチンへ向かった。 すると、主人がすでに起きており、キッチンのテーブルで何かを食べていた。 食べているものを見ると、なんとあの喫茶店で出された、不思議なお菓子だった。 お菓子の包みが、横に無造作に破られて打ち捨ててある。主人は私にまったく気付かない。 お菓子の包みには、「ヨモツヘグイ」と書いてあった。 そんな名前のお菓子は聞いたことも無い。 あの不味いお菓子を延々とぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ咀嚼していた。 おかしい。私は、気味が悪くなって、問いかけた。 「ねえ、あなた、誰?」 私の問いに背を向けていた主人の首が180度回転した。首だけが。
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