拾いもの――もとい、来訪者との出会い

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拾いもの――もとい、来訪者との出会い

 その日は夏日だとテレビで言っていた上に、雲一つない快晴でとても暑い日だった。  そんな真夏にはまだ早いという五月のある日、学校から帰宅したら知らない男がリビングに居た、というか寝ていた。  しかも、この暑いのに黒ずくめの上下で、きっと街中であったらカッコつけてバカみたいとか思ったかも知れない。  けれど、うなされて青ざめていても綺麗な顔立ちをしてるというのは近づいて見なくても、キラキラしたオーラみたいな空気がしてるのでなんとなくだけどわかった。 「えっと……誰?」 「あ、姉ちゃんお帰りー」  洗面器と濡らしたタオルを持ってソファの前、つまり男の前で床に座った弟が、いつものようににっこり笑って振り向いてお帰りを言ってくれた。 「あ……篤、ただいま……じゃなくてーっ! これ誰? 誰っ、何か変なコトとかされたりしてないよねっ?」 「……うわー、姉ちゃんそれはすごーくこの人に失礼……。 うちの前で行き倒れてたから、取りあえず看病してるだけ。 急に暑くなったから日射病かと思って冷やしてるとこ」 「じゃあ救急車とか警察でいいじゃ……」 「姉ちゃん、ちょっと静かに」  煩いなとばかりに溜息をついて、男の頭のタオルと手に持ってた濡れタオルを取り替えると立ち上がって近づいて来た。  まだ小学生なのに、大人びたというか子供らしくないという、よくお姉さんよりしっかりしているわねとか近所の人に言われる弟の顔は、病人の側で騒ぐなと言うように人差し指を口元に当てていた。 「……ごめん、でも知らない人とか家に入れて不用心じゃない」 「この人、ばぁちゃんの知り合いみたい。 魘されながらばぁちゃんの名前呼んでたから、近所の目もあるし、取りあえず休んでもらおうと入ってもらった。 ああ、隣の高木さんのおばさんに運ぶの手伝ってもらったから姉ちゃんからも今度お礼言っといて」 「ばぁちゃんの、へぇ……ばぁちゃんにこんな若い知り合い居たんだ」  ばぁちゃんはここには居ない。今は海の側でのんびり暮らしたいと田舎暮らしを満喫している。 「しっかし……この人綺麗な顔してるなぁ……。  外国人……かな、髪の色は黒だけど、背は高そうだし……」  ソファに近づいて顔を覗きこんで見る。
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