第1章

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私 「昨年、英国で電波探信儀を搭載した偵察機が完成しました。」 百武「ふむ・・・で、その性能は?」   興味を示したのか質問してきた。 私 「詳しくは分かりませんが、20~40km程かと思われます。」 百武「今はその程度でも、性能が上がれば脅威となるな。」 私 「日本はもっと高性能な物が作れます。」 百武「確かに日本は電波技術は世界一かもしれん。」   当時の宇田・八木アンテナは世界で最も優れたアンテナだった。   さらにマイクロ派技術も世界最高峰でった。 私 「世界一なのに、英国に先を越された・・・」 百武「いや、先を越されたというのは違うな。    軍令部は不要と判断しているから開発などするわけが無いからな。」    百武が煙草に火をつけ、紫煙が立ち昇る。 百武「俺が聞きたいのは、なぜ電波探信儀なんだ?    普通なら建艦費だろ。」 私 「船は沈めば終わる、だが培った技術は沈むことがないからです。    それに、あなたは海軍内では嫌われているが    誰よりも日本と海軍を愛している。」    紫煙の向こうが鋭い眼差しに変わった。 百武「知った口を・・・」 私 「間違ってはいませんよね。」    微笑みながら答えた。 百武「だが、見返りは期待しない方がいいぞ。」 私 「見返りなど期待しません、その代わり良い物を是非。」 百武「分かった。」    二人は目線を合わせると、グラスを飲み干した。
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