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「じゃが、その悪の部分が予想以上に力をもってしまってな。とある一つの世界をつくりあげた。その世界がタリナ。もっというと、タリナはただの世界ではない。わしの悪の部分がつくった、物語そのものという認識のほうが正しいのじゃ。
そしてあやつはその世界の登場人物になりきってなにかをしようとしている。いくら作られた、物語の世界とはいえ、れっきとした世界の一つであることには違いない。そこで、じゃ」
そういいながら、老人……オーディンは自らに木の枝のような槍を手渡してきた。
「この枝を使って、なんとかしてあやつをみつけて貫くのじゃ。世界を救ってほしい。わしではあやつのつくった物語に干渉することができないのじゃ」
老人が差し出した木の枝を受け取る。まあ、見つけられればやっておく、ぐらいの気持ちでいればいいだろう。僕の心は、すでに新しい世界への期待に胸をはずませていた。
僕がうなずいたことを確かめると、老人は自分に指をむけながらこうつぶやいた。
「ジェトの体の中に入れば、彼がもっている知識がすべてお主のものになる。最初はとまどうじゃろうが、なれてくれ。先ほどもいったがパーソナルデータの根源が一致しておるから、突然人格が変わって怪しまれる、ということもない。安心せよ」
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