第1章 エピローグ

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 ぐちゃり。ぐちょり。嫌な感覚が手に伝わる。見えるのは二つの死体。そして血にぬれた赤黒い包丁。はみ出た臓物。  聞こえるのは自分の獣のような息遣い。床に転がる二つの死体の目からは光が消えているにもかかわらず、死体に跨って包丁を振り下ろす。何度も、何度も。  臭うのは死臭、血の臭い。鼻を突き刺すようなその臭いは、しかし麻痺しているのか芳しいものとなっていた。  感じるのは体温。包丁を持ち上げるとその切っ先には心臓が突き刺さっていた。暖かい。まるで今にも脈動しそうなほど。そしてそれと比例するように死体は冷えていく。 「もう、こんな人生はうんざりだ」  生まれてこの方高野恭平という人物には良きことがなかった。幼稚園から続く執拗ないじめ。救いの手を求めようにも周りの大人は己の保身を考えしらぬふり。自らの両親は子供を道具としかおもっておらず、少しでも気に障るようなことがあれば殴られ、蹴られた。実の両親に。  警察に助けを求めたこともあった。交番のおじさんはしっかりと話を聞いてくれた。うなずきながら僕の話を聞いて、うなずいてくれた。そして一言。 「おもしろいお話だね。君には創作の才能があるよ」  
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