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階段をゆっくり降りた泰貴は、その足で両親のいるリビングに向かった。
滅多に顔を見せない息子が突然現れ、泰貴の父と母は目を丸くした。
「どうした泰貴?」
「お腹すいちゃった?」
すると泰貴は、何も言わず頭を下げた。
そしてハッキリとした口調で告げた。
「父上、母上。今までご心配をおかけして申し訳ありませんでした」
返事を待たず、顔を上げる泰貴。
「俺、これから真面目に頑張ります。明日からちゃんと職を探し、一生懸命働きます」
その決意に満ちた凛々しい息子の顔を見て、泰貴の両親の目にうっすらと光る物が見える。
「そう……。しっかりね、泰貴」
「辛い事があったら一人で抱え込まず遠慮しないで言うんだぞ。何たってお前は、父さんと母さんの、大事なひとり息子だからな……!」
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