ねずみの罪滅ぼし

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 むかしむかし、江戸(えど)(まち)に“鼠小僧(ねずみこぞう)”という(ぬす)()がいました。  (ぬす)()()うと悪人(あくにん)のイメージがつきますが、鼠小僧(ねずみこぞう)悪事(あくじ)(はたらき)きお(かね)(もう)けている大名(だいみょう)のところにしか(ぬす)みに(はい)らず、おまけに(ぬす)んだお(かね)(まず)しい人々(ひとびと)()()えるという、(けっ)して自分(じぶん)私欲(しよく)のためには(ぬす)みをしない(おとこ)でした。  今宵(こよい)鼠小僧(ねずみこぞう)悪代官(あくだいかん)屋敷(やしき)から千両箱(せんりょうばこ)(ぬす)み、山奥(やまおく)(まず)しい(むら)(とど)けに()こうとしていました。  しかし千両箱(せんりょうばこ)にはその()(とお)千枚(せんまい)小判(こばん)がぎっしりと()()まれており、(かつ)いで(やま)(のぼ)るのはひと苦労(くろう)です。  さすがの鼠小僧(ねずみこぞう)も、道中(どうちゅう)千両箱(せんりょうばこ)()ろし、小休止(しょうきゅうし)をしながら(むら)目指(めざ)していました。 「(むら)まであと一里半(いちりはん)(やく)6キロ)か。()(のぼ)るまでには()きたいな。もうひと()()りがんばろう」  そう自分(じぶん)()()かせ、千両箱(せんりょうばこ)(ふたた)(かた)(かつ)いだその(とき)でした。  ゴキッと(にぶ)(おと)()ったと同時(どうじ)に、鼠小僧(ねずみこぞう)(はげ)しい(こし)(いた)みに(おそ)われました。 「あいたたた! ぎっくり(ごし)だ!」  (おも)わず千両箱(せんりょうばこ)()ろし、その()()つん()いになる鼠小僧(ねずみこぞう)。あまりの苦痛(くつう)(かお)(ゆが)めめます。(こま)りました。これでは(むら)まで(はこ)べません。
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