3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
むかしむかし、江戸の町に“鼠小僧”という盗っ人がいました。
盗っ人と言うと悪人のイメージがつきますが、鼠小僧は悪事を働きお金を儲けている大名のところにしか盗みに入らず、おまけに盗んだお金は貧しい人々に分け与えるという、決して自分の私欲のためには盗みをしない男でした。
今宵も鼠小僧は悪代官の屋敷から千両箱を盗み、山奥の貧しい村へ届けに行こうとしていました。
しかし千両箱にはその名の通り千枚の小判がぎっしりと詰め込まれており、担いで山を登るのはひと苦労です。
さすがの鼠小僧も、道中で千両箱を降ろし、小休止をしながら村を目指していました。
「村まであと一里半(約6キロ)か。日が昇るまでには着きたいな。もうひと踏ん張りがんばろう」
そう自分に言い聞かせ、千両箱を再び肩に担いだその時でした。
ゴキッと鈍い音が鳴ったと同時に、鼠小僧は激しい腰の痛みに襲われました。
「あいたたた! ぎっくり腰だ!」
思わず千両箱を降ろし、その場に四つん這いになる鼠小僧。あまりの苦痛に顔を歪めめます。困りました。これでは村まで運べません。
最初のコメントを投稿しよう!