1億円で老人が手に入れた物

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 ある老人が宝くじで1億円当たった。  老人は当選を知るとすぐに作業員を雇い、家の下に地下室を掘らせた。  周囲の壁を全面、耐食性、耐熱性に優れたチタン合金で覆い、鋼鉄でできた重厚な扉を作らせた。  その扉には、指紋認証や網膜認証など厳重にセキュリティ装置を取り付けさせた。  更に監視カメラを複数設置し、侵入者を撃退する為のトラップをいくつも仕掛けた。  こうして老人は総額1億円を費やし、家の地下に名だたる怪盗も足を踏み入れるのを躊躇うであろう厳重な金庫室を作ったのだった。  完成したばかりのからっぽの金庫を前に、老人は満足そうに頷くとこう言った。 「これでいつ3億円が当たっても安心じゃわい」  1億円で老人が手に入れたものは、安心感だった。  ~おしまい~
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