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聞けば、あれは私が帰省する少し前に、夫婦で出かけた蚤の市で購入した物だという。
夫婦揃って一目で気に入り、雰囲気が合っているから仏壇の前に置いて、お供えを置く敷き布にしたらしい。
その会話の中で、そういえば布を置いて以来、供えた筈の品が何回かなくなった気がすると、こののんきな夫婦はけろりと語った。
この騒動の翌日、私は敷き布を直接触らないよう袋に詰めると、菩提寺の住職の元へと持ち込んだ。
敷き布を見せるなり住職は血相を変え、この品は寺で引き取り、すぐさま供養にかかると言ってくれた。あの場面を見て尚、私には、現物はただの布きれにしか見えないが、どうやら住職には、これが極めて危険な物だとすぐに判ったらしい。
こうして、我が家の怪現象は幕を閉じた。
…それにしても、あの敷き布はいったい何だったのだろう。あれ自体が妖怪だったのか、それとも何かが憑りついていたのだろうか。
別に知りたくはないけれど、今でもたまに似たような布きれを見かけると、あの世の衝撃と共に敷き布の存在を思い出す。
敷き布…完
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