生憎心

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 流れる人たちについて行くと階段があり、それは奥へ続いているようだった。  その手前には白地の看板があり、〝蛍の夕べ〟という黒文字がぼんやりと私の目に入ってくる。 「せっかくだから、上りますか」  散歩などと言える足取りでもない。今立ったばかりの赤ん坊のようなヨチヨチ歩きでその階段を一歩一歩休みながら進んで行く。  ようやく上り切った時にはゼイゼイと息を荒げて、しばらく立ち止まった。  その間に後から来た人たちに先を越されながらも、ああ、と溜め息のような声を出し、再び歩き始める。  ライトに照らされた明るい道なりをフラフラと歩いて、落ち着きを見せた頃に川のせせらぎが聞こえ始める。  そうしているうちに視界にはポウッと黄色い光が一つ、また一つと増え、その光に導かれてさらに進むと、規則性のないイルミネーションが暗く湿った夜を幻想的に照らしていた。
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