生憎心

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「ごめん、母さん。なんにも変わっちゃいないんだ、俺は……」  白い粉に話しかけたところで、何が返って来るわけでもないと知りながら、それでも声に出せば少しは気が紛れた。 「ふう……」  溜め息と共にタバコの煙を吐く。  いずれは来る時だと知りながら、こうもあっさりと死なれてしまうと、残った方の遣る瀬なさというものが一層に膨らみ、あれこれと考えてしまうのだ。  具合が悪いとの連絡を受けてから、彼女は一週間と経たずに逝ってしまった。  すぐに駆けつけるべきだった、そうすれば死に目に会えたかもしれないなどと。  家族に合わせる顔も持ち合わせていない私に何ができようか。  何もできない愚図だと親父も兄貴も鼻で笑っているに違いない。私は葬式にさえ出なかったのだから。  コルク栓のされた小瓶をグッと握った。その冷たさは右手を伝って背筋を震わせた。
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