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深酒に呼吸を荒くさせて寝息を立てては魘されながら、目を覚ますと外がぼんやりと明るくなっていた。
枕元の腕時計は五時半を差す。布団から出てタバコを一本吹かす。
酷く乱れた浴衣と、机の空き缶に目を向ければすぐに自分の所業が窺えた。
タバコを一旦灰皿に置き、左手で顔全体を擦ってからまたくわえる。
猫が受け入れ難い現実を目の当たりにして、困った時に顔を洗うアレと同じように。
「はあ……」
吐息と同時に煙を撒き散らす。
灰皿に落ちたタバコの灰に目を向けた後、小瓶を手にして中の白い粉を見る。
同じ灰の字がつくというのにこんなにも重みが違うものかとそれを握り締める。
この遺灰は火葬場で余った骨をこっそり分けてもらったものだ。そのことを親父や兄貴が知っているのかもわからない。
彼らとは連絡も取っていない。
〝母さんの具合が良くない〟という留守電の一週間後に〝母さんが死んだ〟というメッセージが入っていて、それで知った。
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