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俺の名前は時田優(トキタマサル)。30歳、独身。
高校卒業後、警備会社に入社し、この地方の営業所に配属された。
俺は警備会社社員ではあるが、警備員ではない。
俺の仕事は機械による警備、いわゆるセキュリティシステムの機械の取りつけ工事をする技術屋だ。
石嶺のじいさんは俺の勤める警備会社の隣で、細々とタバコ屋を営んでいた。
タバコを吸うようになってから顔見知りになったのだが、じいさんも俺と同じ競輪という趣味を持っていることから意気投合した。
「じいさん、そろそろホームセキュリティ入れねーか?」
タバコの煙を吐きながら冗談交じりでじいさんにそう話しかければ、
「隣が警備会社なのに警備を入れる必要性はないだろう。これ以上のセキュリティがあるか」
と、75歳のじいさんは、まだまだしっかりしていて、ボケのかけらも見られない。
いつもの切り返しに、こちらは形無しだ。
でも、いつもそんなじいさんになんだか和む俺。
じいさんと俺と、毎回こうやって冗談めいたやりとりして笑っていた。
『あんなボロいタバコ屋、よく潰れませんよね?』
俺らの営業所員くらいしか客がいなさそうな細々としたタバコ屋。
入社当初、そんな疑問を投げかけると、『あのじいさん、実は土地持ちなんだよ。この辺一体の土地はだいたい石嶺のじいさんのものらしい』と地元出身の警備課長が教えてくれた。
だが、本人は本当に至ってフツーのじいさんだった。
温厚そうで、ちょっと頼りなさげだけど、でも数字の計算は機械なんか使わずにパッと言うのには驚いた。
40歳以上の年の差はあったが、俺の車で場外車券場に一緒に乗り合わせて行くほど俺らは仲良くなっていた。
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