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「………なんかじいさん、最近顔色悪くないか?」
ふと見たその顔色は悪く、表情もどこか疲れているようにも見えた。
「………どこか悪いのか?」
恐る恐るそう聞けば、じいさんはニッコリ笑って目を細めた。
「身体なんて、とっくに悪くしてるさ。この頃、血圧が高くてな………」
苦笑いしながら石嶺のじいさんはそう言った。
「血圧かぁ。大事にしてくれよ」
本当に心からそう思った。
そんなある日のことだった。
いつも通り他愛ない話をしていると、じいさんが妙に真面目な顔をして俺に相談を持ちかけてきた。
「あの、時田君………いや、そのな、うちにセキュリティを付けようかと………」
そのきな臭い台詞に、仕事柄眉がピクリと反応した。
今までセキュリティを入れること自体煙たがっていたのに。
「………何かあった?」
「いやいや、何かあるって訳じゃないんだが。身体も心配になってきたしな」
「………分かった。
とりあえず営業に見積もり持ってこさせるわ」
ホームセキュリティは防犯もだが、非常通報先としての需要が高い。
何せ、ボタン押すだけで警備員が駆けつけてくれるのだから。
駆けつけたら契約者が発作を起こして倒れていたなんてことはよくある。
ただ、じいさんに関しては新規契約が取れそうな事よりも、セキュリティを入れないと不安な状態なのかが心配だった。
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