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突然の訃報に俺はただ驚いた………。
昨日だって普通に会話してたのに。
『今夜甥っ子たちが来るって言うからうまい饅頭を準備したんだが、食ってくか?』って言ってくれたのに。
確かに高齢ではあったけど………信じられない思いでいっぱいだった。
俺は訃報を伝えてくれた所長に通夜と葬儀の場所と時間を確認し、本日の業務に取りかかった。
次の日俺はじいさんの葬儀に参列した。
もちろん昨日の通夜にも行った。
葬祭場に着けば、あの甥と姪も祭壇の近くにいる。
そして何故か営業の飯塚君もその二人の側で何か会話をしていた。
黒い服を着て、神妙そうに会話をする3人は、見ようによってはじいさんの死を悼んでいるようにも見えなくもない。
飯塚君は俺に気付くと、一瞬気まずそうな顔をしたが、すぐにいつもの人懐っこい笑みを浮かべて俺に近付いてきた。
「石嶺さんの家に設置した機械なんですけど、近日中に取り外しして欲しいそうです。
………付けっ放しだとその分料金がかさむからって………」
確かに一理あるとは思うが、わざわざこんな席で話すようなことだろうか。
もっとじいさんとの思い出を語るとかさ、少しくらい悲しそうに装えよと心の中で呟いた。
「分かった………。日にちはいつがいいか聞いた?」
「葬儀が終わればいつでもいいそうです」
「じゃあ明日、俺が取り外しに行くからってあの人たちに伝えててくれ」
「はい」
あの甥とも姪とも話をする気になれず、俺は伝言を飯塚君に託し祭壇へと向かった。
そこには俺の知っているじいさんよりだいぶ若いじいさんの遺影があった。
お焼香をし手を合わせ、俺はじいさんへ話しかけた。
もっといっぱい話したかった。
もっとサテライト連れて行ってやればよかった。
森伊蔵も飲ませてやればよかった………。
目を閉じれば、後悔ばかりが浮かび上がった。
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