第1章

3/7
前へ
/14ページ
次へ
四十九日の法要が終わり、母、佳代(かよ)がため息をつきながら言った。 片付けないといけないよね。 麻美はなんのことだろうと一瞬思ったが、すぐに祖父の家のことだと気づく。 父、康(やすし)と兄、晃一(こういち)が目を見合わせる。 兄嫁、真衣(まい)が心配そうにその様子を見守っていた。 母は一人娘だ。 祖母は五年前に亡くなった。 祖父のモノはすべて母が引き継ぐか処分しなければならない。 そんな訳で初秋の風を感じる休日、麻美達家族5人は祖父の家に向かった。 麻美達の住む街から海岸線を一時間程走り、山に向かって左折する。 それから15分ほどで、山あいの田畑が広がる地域に祖父の家はある。 田んぼや畑はどうするのかな? 毎年届いていたお米、時々食卓に上るお野菜。 一人で黙々と土を耕す祖父の背中が目に浮かぶ。 もう祖父には会えないことが胸に迫る。 それは皆が同じ気持ちなのだろう。 祖父の家の前に止めた車から、5人は静かに降り立った。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加