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「何から始めようかしらね?」
他人の家に入るようなよそよそしさと懐かしい故郷に還った安堵感を漂わせ、母は玄関の鍵を開けた。
「部屋ごとに分担して、とりあえずいらないモノと要るモノに分ければいいんじゃない?」
晃一がそう言うと康がそうだな、と頷いた。
「要るか要らないか、私には判断できないよ?」
真衣がエプロンをつけながら、晃一に言った。
「そうね。
だいたいが処分しなければならないから、大事そうなモノとか思い出のモノ以外は捨てるモノと思っていいかな?」
佳代がそう言うと素直な真衣はウンウンと頷いた。
「真衣ちゃんは台所をやってくれる?
ほとんど捨てるモノだと思うし…。」
佳代は続けてそう言うと、晃一には納戸、麻美には寝室、康には書斎のような部屋と割り当てた。
自分は一番重要な通帳や書類のありそうな、茶の間や仏間やそれらしいタンスを見ることにした。
学校の先生らしい佳代の指示に残りの四人はすぐに従い行動を開始した。
麻美も普段は全くしないエプロンをつけて、祖父が寝室にしていた奥の和室に向かう。
麻美達にはあまり縁の無い畳の部屋ばかり。
母が子供時代から過ごした古い家なのだ。
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