第1章

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 「低炭素社会、資源循環、生物多様性」の3つの関係について、少し説明します。資源循環は、地球が持っている資源をできるだけ大切にしようという活動であり、生物多様性の保全は、地球という星で共に育った仲間である生物種をできるだけ多く残そうという活動です。「地下資源と生物資源の保全」というくくりで考えれば、同じように議論できる話です。要するに、現在あるストックとしての資源をあまり減らさずにきるだけ使えるように残すことです。簡単にいえば、地球の価値をどれだけ保って次世代に受け継ぐかという問題です。それに比べて、地球温暖化はこれから百年間の気温の上昇速度を遅くするという問題です。フローの問題であり、本質的に違います。ただし、21世紀中は地球温暖化が最大の環境問題であり続けるでしょう。それほど気温の上昇速度が速すぎるのです。ブレーキを掛けないと近代文明が破綻する可能があります。  気温上昇を遅くする方法は、化石燃料を使わないようにすることしかありません。燃やした二酸化炭素を吸収する簡単な方法はありません。しかし、脱・化石燃料をいうのは簡単ですが、非常に難しいことです。私には不可能なことのように見えます。ですが、このテーマに取り組んでいくしか人類が生き残る方法はありません。  世の中には、21世紀末には科学技術が発展して気候変動問題など解決してくれるだろうと、根拠なく期待している人がいます。私は、それは過度の期待だと思います。もっといえば、自分たちが解決できずに残しておく宿題を、子孫が解決してくれるという甘い予想だと思います。最近の二十年でパソコンは信じられないほど優秀になりましたから、未来にも同様のことが起きるというような議論です。しかし、エネルギー分野ではそれほど画期的なアイデアは生まれていませんし、これからも生まれないと思います。現在も30年前に設置された火力発電所の電力を使っています。  科学技術のブレークスルーに期待し、未来の子供たちに宿題を押し付けるのではなく、現在の科学技術を使って地球で生存していくための社会的な仕組みを発明しないといけないと思います。社会的な仕組みは、配給制とか、未来の価値への投資というようなものです。宿題を残すのではなく、解決する筋道を残していくのです。
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