20cmの距離 2

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俺は、寝転んでいた身体を起こして胡坐を掻いて座るとじっと見つめて 「そうだよ・・・琴音。浴衣も似合っているし、濡れた髪を乾かしている姿が、すごく色っぽいよ」 と言った。 一瞬の沈黙の後、明らかに照れた笑い顔になって 「な 何言ってるの・・・真面目な顔して 」 と言うと、左斜め下に視線を逸らして黙ってしまうが、口元は緩ん でいる。 頬が赤くなっているのは湯上りのせいだけではないだろう。 俺は、ゆっくりと彼女に近づいて肩に手を掛けると、優しく後ろに倒していった。 彼女の笑顔が消え、真面目な顔に戻る。 「えっ だめ だよ・・・」 小さな声で呟くが、抵抗はしないで目を閉じてくれる。 濡れた黒い髪が縁側に広がって、その中で目を閉じている彼女の白い肌と赤い唇。 自分が抑えられなくなっていた。 キスをしようと顔を近づけていく。 俺も目を閉じようとしたその時、いきなり目をパッと見開いて見つめてきた。 少し驚いて思わず動きが止まってしまう。 彼女の大きな瞳が更に大きく感じられる。 20cmの距離を挟んで、息を止めてじっと見つめ合う。 彼女が先に話し出した。 「もうすぐ夕食の支度をする為に部屋に人が来るよ」 「そうか・・・そうだね」 「うん、だから・・・我慢して」 「この状態から引き返せるかな・・・」 「引き返して」 「それじゃ、キスだけ・・・ 」 と言って顔を近づけると、両手で俺の頬を挟んで動きを止めながら首を左右に振る。 「キスだけじゃ我慢できなくなるから・・・」 と言った。 「だから、我慢するの」 と更に言った。
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