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彼女は露天風呂から戻ってくると、庭に面した縁側で髪
を乾かし始めた。
旅館のドライヤーは風量が弱くて、彼女の長い髪を乾か
すことが出来なかったらしい。
窓を開けると外から入ってくる気持ち良い風に髪をさら
している。
2人で始めての旅行に温泉のある旅館を選んで、しかも
離れの部屋を借りた。
そこは居間と寝室そして縁側があり、外には小さいなが
らも庭園風の庭を見ることが出来る。
また男女別の露天風呂があるので、夕食前にそれぞれ入
浴に行ったのだ。
先に部屋に戻っていた俺は、暇つぶしに居間の畳の上で
寝転びながら庭をぼんやりと眺めていた。
15分ほど遅れて戻ってきた彼女は、湯上りらしく頬を
赤くし、髪を後ろで1つにまとめ、額に汗を浮かべなが
ら言った。
「良いお湯だったね、そんなに熱くなくって良かった。
景色も最高だったし。
だけどドライヤーの風量が弱くて髪、乾いてないんだ」
そう言うと、寝転んでいる俺の足元を通って縁側に出る
と、窓を開けてから脚を右側に崩して座り、持っていた
タオルで髪の水分を取り始めた。
「良い風が入ってくるね、気持ち良い・・・」
1人で見ていた庭の風景に、彼女が加わった。
普段ミニスカートや肩や背中の開いた服を着ているのを
見た時のドキドキする感情や海、プールでビキニになった
彼女と、一緒に遊んだ時に感じた健康的なセクシーさとは
違って、適度な湿度と女性の香りが彼女の周りを包んでい
て、いつもより露出はずっと少ないのに、しっとりとした
落ち着いた雰囲気の色っぽい彼女がいた。
濡れている黒髪、白い肌がほんのり上気して薄いピンク色
になった頬、髪をかき上げた時に見えるうなじ、しっかり
閉じられていても気になる浴衣の胸元・・・それに・・・
「ん? 何? じっと見てるけど・・・」
顔を左に傾けて髪にタオルを当てたまま、静かに笑いなが
ら言った。
「えっ いや・・・別に・・・」
本当は色っぽいね、と言いたかったけれど、今の雰囲気を
壊したくなくて黙っていた。
そんな俺の態度に、彼女は悪戯っぽく笑いながら
「あ~分かっちゃった~♪ 実は今、おっ 色っぽいな!
なんて思ってたでしょ ねっ そうでしょ?」
と嬉しそうに話す。
こんな時、見せる彼女の子供っぽい笑顔も魅力の一つだった。
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