0人が本棚に入れています
本棚に追加
俺は、寝転んでいた身体を起こして胡坐を掻いて座るとじっと見つめて
「そうだよ・・・琴音。浴衣も似合っているし、濡れた髪を乾かしている姿が、すごく色っぽいよ」 と言った。
一瞬の沈黙の後、明らかに照れた笑い顔になって
「な 何言ってるの・・・真面目な顔して 」 と言うと、左斜め下に視線を逸らして黙ってしまうが、口元は緩ん
でいる。
頬が赤くなっているのは湯上りのせいだけではないだろう。
俺は、ゆっくりと彼女に近づいて肩に手を掛けると、優しく後ろに倒していった。
彼女の笑顔が消え、真面目な顔に戻る。
「えっ だめ だよ・・・」
小さな声で呟くが、抵抗はしないで目を閉じてくれる。
濡れた黒い髪が縁側に広がって、その中で目を閉じている彼女の白い肌と赤い唇。
自分が抑えられなくなっていた。
キスをしようと顔を近づけていく。
俺も目を閉じようとしたその時、いきなり目をパッと見開いて見つめてきた。
少し驚いて思わず動きが止まってしまう。
彼女の大きな瞳が更に大きく感じられる。
20cmの距離を挟んで、息を止めてじっと見つめ合う。
彼女が先に話し出した。
「もうすぐ夕食の支度をする為に部屋に人が来るよ」
「そうか・・・そうだね」
「うん、だから・・・我慢して」
「この状態から引き返せるかな・・・」
「引き返して」
「それじゃ、キスだけ・・・ 」
と言って顔を近づけると、両手で俺の頬を挟んで動きを止めながら首を左右に振る。
「キスだけじゃ我慢できなくなるから・・・」
と言った。
「だから、我慢するの」
と更に言った。
最初のコメントを投稿しよう!