出逢い

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出逢い

俺はついていた。 三流大学で、就職なんてどこでもよくて、働けたらいい、どうせ、一流大学卒業の奴らにはかなわないしな… だから、中小企業狙いで就活。 しかし、バブルの頃、就職先はあっけなく決まり、卒業してすぐに研修、地方の営業所に配属になった。 姉貴の旦那の都合で、春に結婚式を挙げることになっていたが、ちょうど、配属の日と重なり、出席できなかったが… いきなりの名古屋。 まだ、新幹線のチケットの取り方も知らず、携帯もなかった頃の話。 地図片手に営業所に行き、挨拶。 上司となる人は、話のわかるいい人だった。 新人は俺一人。 独身寮は二人部屋。 その部屋の先住人のイビキはひどかった。 寝れない… 仕事にはすぐに慣れ、得意先をまわる日々。 忙しく、充実した毎日だったが、夜、寝られないほどのイビキには耐えられそうになかった。 なんども部屋替えを訴えたが、空きはないからと もう少し我慢してくれと言われ、 当の先輩は俺様的な奴で、年功序列が当たり前だった頃だから、意見も言えず、 そろそろ限界。 と辞表など書こうかと思っていた頃、降って湧いてきたような合併話。 大手一流企業と合併した。 晴れて俺は借り上げマンションの一室を充てがわれ、安心して眠れるようになった。 それから3年。上司の紹介で見合いをし、そのまま結婚した。 好きとか、嫌いとか…そんなものなくても結婚はできる。 子供を作り、安定した家庭。 出世の条件。 そんなものって思っていたが、この仕事、信用が一番。 当たり前だと思っていた。 順調に仕事は進み、もちろん子供二人、女の子だったが、授かり、それなりに充実していた。 外見上は幸せな家庭だったのではないかと思う。 ただ、子供が二人できた後、性生活はなくなった。 その頃は先輩の話などからそんなものと思っていたし、外で処理したらいいや程度。 妻もしたがらなかったし、浮気しようが俺には関心がないようだった。 「転勤になった。」 結構早い期間で転勤になり、子供が生まれるまでは、彼女もついてきていたが、 子供が二人できて妻の実家の近くに家を建てたら、単身赴任になった。 そう伝えると 彼女は、そう、と言い、引越し先が決まったら教えてといつも通りの会話。子供たちの近況報告。そして、子供と会話。 たまに帰ってきてもその程度で、この家に俺の居場所はなかった。
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