出逢い

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この会社に入社して、もう、10年。 係長として、上にも下にも挟まれて大変なポジション。 その割に、しっかりノルマもある。 課長は足らない数字は全部俺にかぶせてくる。 まぁ、どうにかしてやるが… そんな頃、この営業所にも、新入社員がやってきた。 「横山愛美です。よろしくお願いします。」 なかなかの美人。短大卒の20歳。 しかし、人見知りなのか、溶け込めないでいた。 「愛美ちゃん。これ、精算よろしく。」 俺は彼女の頭をポンポンと叩きながら精算書と領収書を渡す。 「もう!日沖係長!セクハラです!」 髪の毛を整えながら、真っ赤な顔をして抗議する。 彼女の先輩もそうよそうよと俺に抗議する。 「あーもう、わかったわかった!次ちゃんと土産買ってくるから。」 「どこに出張ですか?」 「富山か、石川。」 「それじゃあ、羽二重餅ね。お願いします。」 そんなやりとりを繰り返していくうち、なんとか、溶け込めたようだ。 何度申請しても、新人が来ず、平均年齢が高い事務だったが、彼女のおかげで明るくなったようだ。 夏になって、営業所の飲み会。 彼女は俺の隣に座った。 気を使ったのか、しゃくをしてくる。 でも、無礼講の飲み会。 「俺のペースで飲むから、しゃくしなくていい。愛美ちゃんもしっかり食べて飲みなよ」 「係長…」 「堅苦しいから、日沖でいいよ。」 彼女は少し躊躇しながら 「じゃあ、日沖さんで。」 ちょっとしたことで赤くなり、苗字を呼ぶだけても照れる。 俺も、酔いが回ってきたのか、気を良くして、 「愛美ちゃんは呼びにくいなぁ。 愛美だからマナフィって呼ぼうかな。」 「なっ…私、あんなにノンビリしてませんよ!」 俺の背中をバシッと叩きながら抗議する。 「いいじゃないか。癒し系で。愛美ちゃんも俺の癒し系。」 彼女の顔を見ながらそう言うと、 彼女は赤い顔しながらうつむき、 仕方ないなぁと呟いた。
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