28/28
122人が本棚に入れています
本棚に追加
/200ページ
 意外な話にまだ頭がついていかない。  つまり、住み込みでジーンの世話をする。それ以外は自由で、しかもお金がもらえるってことなのか。  それってかなりおいしい話じゃないだろうか。陽聖にとってマイナスな部分は特にないように思う。  ジーンの言う通り、ここにいることでジーンだけじゃなく陽聖も知りたいことを知ることができるだろうし、ジーンの人となりも知ることができる。  よくうまい話には裏があるなんて言うが、七条家の人間がそんなことをするはずはないし、そうする理由もない。  そう結論が出ると無意識に頷いていたらしく、ジーンも満足そうに頷いた。 「そうと決まれば車を出すから荷物を取りに行ってこい。お前の部屋はこれから用意させる」 「え……あ、うん。わかった」  なんとなくいいように進められている気がしなくもないが、ジーンは善意からしてくれているんだろうし、何より自分も今納得したはずだ。  これからしばらくは小野瀬の食事を毎日食べられて、増田に昔の話を聞ける。最初は慣れないだろうがなんの不自由もないしなんの疑問もない。  ジーンが立ち上がったのを合図に陽聖も立ち上がり、ここに来る準備のために動き出した。
/200ページ

最初のコメントを投稿しよう!