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「そんなのやってみなきゃわかんねえだろ!」
とは言ったものの、この一週間という短い間に少しずつ仕事の大変さがわかってきていた。
これまでアルバイトはおろか家のこともしたことがなかった陽聖は自分の部屋の掃除すらしたことがなかったせいか初めて覚えることの多さに戸惑った。
増田も最初は驚いていたが、一つずつ丁寧に教えていく中で陽聖はできないのではなくやらなかっただけなのだと気づいたという。
周りから見たら簡単なことでも初めての陽聖には難しかったが、増田の教え方がうまいからかあっという間に仕事を覚えてなんでもできる気になっていた。
けれど実際は社会に通用するどころか一般生活を普通に送れるだけの知識が身についただけにすぎず、そのことに陽聖自身も今さらながらに気づく。
こんなことで得意気になっていた自分に一体何ができると言うのか。これでは一人暮らしも満足にできないレベルである。
考えているうちにさっきまでの勢いがなくなったのを認めたジーンが静かに息を吐き出した。
「お前がどうしても他へ行きたいならそうすればいいが、まだここで働こうと思うなら今回のことを踏まえてしっかりやることだ」
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