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「なんなんだあいつは」
陽聖が去ったのを気配で感じたジーンはベッドに座ると吐き捨てるように呟いた。
当初の計画通りに事が進んでいれば、今頃は埋蔵金を手に入れるための準備が整っていてもおかしくはなかった。
それなのに、陽聖があまりにも無知なためにこんなにてこずらされている。
そう。ジーンの目的はただ一つ。埋蔵金を手に入れることだ。
そのために周りからの非難や反対を押し切り日本へとやってきたというのに、いまだに何もできずにいる。
そもそもこうして埋蔵金をあてにしてやって来ることになったのもすべて死んだ俊之のせいだ。
俊之があんな事故で死にさえしなければ、ジーンが跡を継ぐこともなかった。そうすれば慣れない仕事をすることもなく、失敗して損失を出すこともなかったのだ。
だがそんなことを今さら言ったところでどうしようもないことはわかっていた。
それでも恨み言の一つも言いたくなるのは、ジーンが望んだことではないからなのかもしれない。
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