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 出かけるなんて聞いていなかったがどこか急に出かける用でもできたんだろうか。  吹き抜けの二階を見上げ、とりあえず荷物を置いてくるかと部屋に向かう。するといつもは完全に閉まっているジーンの部屋のドアが開いていて、一瞬身構える。  ――なんでまた開いてんだよ。すげぇヤダ……。  まだあの日の傷は癒えていない。それどころかまともにジーンと会話すらしていなかった。  あの痴態を見せられた次の日、レイラはアメリカに帰ってしまい、そのあとから少しジーンの様子が変わった。  陽聖は自身の変化に戸惑うあまり、謝罪したい気持ちを持ちながらもそのときの様子がどうしても頭にちらついて素直に謝れずにいる。  そしてジーンも風呂での世話をやらせなくなり、必要なこと以外は話しかけてこない。  だからなんとなくぎこちない空気が二人の間にあったし、こうしてまたドアが開いているというのが嫌でもあの日のことを思い出させた。
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