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「ちょっと待て。これだと指を切るぞ。こういう場合はこうするんだ」
皮を剥き終わった野菜を切るように言われ、陽聖は順調に包丁を振り下ろしていたが、残り少なくなると押さえるところがなくなり切りづらくなってきた。
その様子を見ていたジーンは陽聖を後ろから抱きすくめるように身体を覆うと、包丁を握る手ごと握ってくる。
「ちょっ、なんだよ離せって」
「バカ暴れるな危ないだろ。教えるから大人しくしていろ。いいか」
耳許で囁かれて否応なしに包丁を握る手を動かされる。
こうやるんだと教えてくれてはいるのだが、陽聖はもうそれどころではなかった。
身体はぴったりと密着し、吐息は耳にかかり、おまけに手までしっかりと握り込まれている。
鼓動は暴れるように早鐘を打ち、カァッと全身が熱くなるのを感じた。
「わかったか?」
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