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シャワーを浴びて出てくると、休日用の服に着替える。
今日はジーンズにシンプルな某ブランドの白いTシャツだ。
洗濯にはとても気を遣っているので、これで購入後数年になるが、さしたるダメージ感もなく着心地も損なわれていない。
生地が良いから、気に入っている。
汚したくないからエプロンをつけてキッチンに立つ。
裸足の踵に何か踏んで、彼は苦い顔をする。
……「柿の種」。
酒のつまみとしてはもはや「チーズおかき」と双璧で、銘菓と称しても良いと思うが、キッチンの床で足下に遭遇したいものではない。
昨夜、ビールを手に、この袋を小脇に抱えて、大笑いしながら家の中を徘徊していた悪友の様子を思い出す。
彼は踵をあげて手で足の裏を払い、菓子屑をもう片手で受けて、ごみ箱へ持っていく。
そのまま壁掛け式にしてある吸引力で定番の掃除機を持って帰ってくると、先に床をすっきりさせてしまうことにした。
地雷のように足元を気にしながら歩くのは精神衛生上よろしくない。
「黒崎め……」
ぱちぱちと音をたてながらいろいろ吸い込まれていくのに、静かに眉間の皺を深くする。
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