【 内村氏はオカンムリ 】

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 昨夜もいつになく、興奮している様子だった。  見た目にそう変化はなくても、発言に変な力というか、勢いが生じていたのでよくわかる。  目つきも大変よろしくなくなっていた。 いや、良くなっていたのか。  ……断定に困るところである。  いろいろな人間をこれまで彼も見てきたが、やはりこの桂が、彼の知り合った中では一番の変人と言って良さそうだ。  ……そこまで考えて、ふと、また、彼女の事を思い出す。  いや……彼女が今、真正面から向き合い、奮闘している、彼の顧客の方が、もしかしたら、変わっているといえば変わっているかも、しれないが。  だが、彼があぁなったのには、彼なりのちゃんとした理由がある。その点でいうと、やはり、生まれつきあの状態である桂の方が、純然たる変人と言って良さそうだ。  すぐにみそ汁の具に火が入ったので、いったんコンロを切り、みそを出すために冷蔵庫を開ける。  ついでに彼女がくれたお裾分けの単品も一緒に出してしまおうとして……顔をひきつらせる。
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