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「暗い夢」サイトシリーズ② 「M」 - 1
斉藤健と鈴村かよは、その夜もいつも通りそれぞれ自宅の自分の部屋にいた。
風呂上りの鈴村は、自室で専用のボウルに洗い流さないタイプの高級トリートメントを丁寧に自分で調合しているところであった。
海外のセレブも御用達のそれは、父親の知り合いのスタイリストが自分のために用意してくれたものだ。
自宅から都内には電車で1時間ちょっとくらいだ。
いつも行く都内の美容院は芸能人もお忍びで通うほどで普通は予約が入れられないが、父親の名前を出すとすぐに予約を入れることができる。
鈴村はいつものように調合したトリートメントを丁寧に指で掬い取り、頭皮から毛先までゆっくりと両手の指を使いながら塗布していく。
学校中、いや県内の全女子高生が羨む存在であると鈴村は自負していた。
父親は有名なデザイナー、母親も今は家庭に入っているが有名大学出身であることを誇りに思っている。
少し離れたテーブルの上のホルダーに置かれたスマートフォンには、ボーイフレンドの斉藤健の姿が映っていた。
現在、お互いの姿をスマートフォンで撮影しながら会話をしている。
斉藤健とは、中学校で知り合った。
何でも親戚が警察の仕事をしながら古武術の道場をやっているらしく、幼少時から古武術を習わされており喧嘩も少しは腕が立つ。
斉藤本人は古武術など全く興味がなく、年なりに音楽やオシャレ、友人たちとの時間の共有を優先する最近の若者であった。
そのため、中学からは一切道場に顔を出していないとのことだった。
中学校在学当事、鈴村はボーイフレンドがいなかったがクラスの一部の女子から妬まれており、いじめを受けていた。
そんな時、みかねた斉藤が助けてくれたのだ。
斉藤はいじめを行っていた女生徒の弱みを握り、逆にその生徒たちがいじめの標的になるように仕組んだ。
そして皆して転校させるまで徹底的にいじめ抜いて助けてくれた。
そこから、鈴村の方から声をかけて斉藤と付き合うようになった。
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