一億円

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「もしもーし。どうした?」 『いや、俺の助けが必要じゃないかと思ってな』  用があるのはそっちだろうに、とは思うが、これが素の雄二だ。で、僕の返事も待たずに本題に入るのもいつも通り。 『でな、今日暇か? メシでもどうかと思ったわけだ』 「今日は優奈と出かけるって言ってなかったか?」 『お、そうだったな。悪い悪い。んじゃ、今度お前の奢りでメシ行こうや。な?』  そのまま通話が切れる……。  いや、『んじゃ』じゃねえだろうに。  その前に僕の奢りってなんだ?  雄二にだって一億円のことは話してない。  気付いてるかどうかは分からないが、雄二のヤツはあれで本心を隠すのが上手いからな。 「もしかして、雄二くんから?」 「ああ、メシ行かないか? だって。アイツ思いつきで電話してくるからな」 「今日は私の方が先約だもの。残念でした」  そう言って笑う優奈の笑顔が、どこかわざとらしく映る……。  目の奥の奥が何か笑ってないような……。  もちろん優奈も雄二のことはよく知ってる。  ふたりで僕のプレゼントなんかを買いに行くことも確かあった。  ふたりとも信用できる……はず……  そう、ずっと信用してきた……
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