一億円

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 ……においが違う?  ……僕のものではないにおいがする……ような気がする。  確か……机の上のノートは表向いてたはず……。  それに……、優奈が僕を見ている気配がする。  そうか。僕の動きから隠されてるモノを見つけるつもりなのだろう。  だがそれは僕を甘く見ている。  僕は何食わぬ顔で冷蔵庫に向かう。 「なあ、お茶でいいか?」 「ええ……、ありがとう」  珍しく歯切れの悪い返事。  ボロを出すのが早すぎないかい? さっきから僕に向ける視線の不自然さと合わせれば、僕の疑惑は確信に変わる。 「ねえ、功太……。あなた、やっぱり変よ。本当に大丈夫? 具合悪いんじゃないの?」  ……今日一日、僕が上の空だったことは認めよう。考えなきゃいけないこと、疑うべき事柄があったからな。  だが、だからといって、心配したフリをした追及の手を強くするのは失敗というものだろう。  焦っているのか、何かミスをやらかしたのか……。  そうか!!  ひとつの仮説が浮かぶ。  今日一日、優奈が監視という名のデートをしている間、優奈から僕の部屋の鍵を借りた雄二が捜索したのではないか。  これなら、雄二が僕に電話してきたのも、優奈が鍵を持って来なかったことも説明がつく。  そして何も見つからなかったことも明白。  僕に真実を教える材料を与えるだけになる。
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