第1章

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男は何のことだかさっぱりわからなかった。スーツ姿の男を家に上げ、話を聞くことにした。 スーツ姿の男はN社の者だと名乗り、名刺を渡した。 「あなたの奥様は、わが社が開催したゲームに参加されました。3000万円を30年間使いきらずにいられたら賞金が獲得できる、年収200万円以下の窮民を対象としたゲームです」 男は遺産の額に思い当たった。しかし、遺産は1億円だったはず。もう7000万円は? 「最初にわが社から付与するのは、ゲーム参加者様の手持ちの財産と合わせた1億円です。1億円のうち、3000万円を使いきらなければいいのです。だって、3000万円きっかり渡してしまったら、底を尽きそうになったときがわかってしまうでしょ。勿論自力で1億円以上稼いでも構いません。 最終的に財産が3000万円以上残っていればいいのです。 窮民は1億円を手に入れたとき、嬉々としてそれを使おうとします。あるいは、使わざるを得なくなります。今まで手にしたことのない額に、金銭感覚も狂います。理性を失うこともあります。少しの余裕を与えて、ゲームオーバーに陥る。それがこのゲームのミソなのです」
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