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「行ってきます。」
「のどは大丈夫?」
「…ご心配なく。」
嘘だ。若干まだからからしている。
でも、子供の不幸を糧にするこの父に、なんとなくそれを言うのは癪だ。
「ノートと携帯も忘れずに!」
俺は玄関を振り返らずに走り出した。
あの野郎…いつかアキトさんに黒歴史大公開してやる…。そんなことを決意しながら。
今日から俺は二年生だ。
「…一年ってたつのが早いよな。」
目の前をきらきらとした目をした新入生が駆け抜けていく。
ああ、なんて尊い。
きっとあの新入生はちゃんと自分の将来を考えて自分の進学先を決めたのだろう。
改めて自分の入学理由を考えて頭が痛くなった。
すまない、こんな先輩で。
新しいクラスに入ると、真っ先にあいつが突っ込んできた。
「なっちゃーーーん!」
「うぐう」
ふわふわとした髪の毛が、一瞬で俺の胸に激突する。
おお、相変わらずとんでもない頭突きだ…。
「おはよう、ニシ。俺の胸骨がミシミシいってるからちょっとどけてくれないか?」
「あっ!ごめん!」
数秒後、俺の視界に瓶底眼鏡のちまっとした少年が現れた。
このクレイジーな頭突きを持つ者は俺の可愛い親友の『西 裕也』だ。
いかにも地味といった風をしているが、その持ち合わせた天使オーラで、前クラスではクラスのマスコット権を勝ち取っていた。
まさか二度も同じクラスになれるとは思ってもみなかった。
うれしい限りだ。
「そういえば、南も同じクラスだよな。」
「うん、そうだね。」
どこにいるのだろう。そう思った瞬間、
俺の胸骨が死んだ。
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