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夕方近くになると、さっきまでの大雨も穏やかになり、遠くの空では明るさも取り戻しつつある。
そろそろ帰ろうかと藤堂さんがエンジンをかけたところで、さっきまで沈黙を保っていた私の携帯が鳴り出した。
チラリと見ると、掛けてきたのはひろくん。
「出ないの?」
「なんとなく、出たくないんです」
ひろくんとは前回の藤堂さんとのデートの後、車の中でキスされて以来なんとなくぎこちなくて。
私が一方的に意識しているだけなのかもしれないけど、どうしても今まで通りってわけにはいかない。
10回くらいコール音が続いた後、諦めたように携帯は静かになった。
いつものひろくんなら何度も掛けなおしてくるのに、今日はそれっきり。
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