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   自分の食事を並べた宙は、エリックの膝へ戻ってきた。  いただきますと手を合わせ、箸を取りかけて、突然振り向いた。何か思いついたようだ。 「ね、エリックも一緒に食べよ?」  笑顔を向けられれば、何も返せない。  するりと膝から降りた宙は、もう調理台を見上げて何か言っている。  でも結局、追加は作ってもらえなかったらしく、一品少ないが自分と同じ量の食事を持ってきた。白い粒と、野菜の入ったスープ。  隣に座った宙に箸の使い方を教わり、上手く操れないエリックは悪戦苦闘しながら口に運ぶ。  ただただ、嬉しそうな宙のために。  あの人に、いつもよりはしゃいで食事をしているのを注意されるが、宙は全く聞いていない。  そんな様も、エリックには愉しかった。  時折あの人が、こちらを観察するように見ていても、気にならなかった。      
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