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  ***   朝食後、宙は部屋で折り紙を始めた。  まぶしすぎる日光を避けた、ベッドのそば。  床に座る二人の周りには、折られた色紙がいくつも並んでいる。  花、船、飛行機、蛙、箱、塩。  どれもエリックには正体が分からない形だが、折った当人がそう言うのならそうなのだろう。  廊下を通り過ぎる足音が聞こえ、エリックは、様子を伺うように耳を澄ませる。  宙の姉だ。  警戒するまでもなく、足音はいつも通り、ダイニングへ向かった。  肩の力を抜く。  彼女には、見つかってはいけない気がしている。  機嫌を悪くしたときの声も苦手だ。  この部屋に居るあいだは、足音くらいしか聞こえないが。  ドアが開いたままの時などは、落ち着かないのだ。  
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