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   エリーズのベッドからは、規則正しい寝息が聞こえる。  彼女は何事にも関わらない。  食事と紅茶と散歩と本。それだけ揃っていれば、いつも以上には文句を言わない。  弟が話しかければ答えもする。  自分が来た頃と、さして変わっていない。  変わったといえば、あの死人だ。  死神に構われているだけだったあの男は、宙と一緒に遊ぶようになり、今は一緒に朝食の席に着き始めた。  宙に少しずつ教えられ、箸まで扱えるようになって来ている。  死人がものを食べて大丈夫なのかと思うが、今のところ目に見えた変化は無い。  ただ、機械的に箸を動かす様子は、味など分かっていないように見える。  喜ぶ宙に、合わせているだけだろう。  子供にすら言いなりのあれだが、もし、何かどうにかなって、ここから居なくなるような事があったら。  宙はどれほど動揺するだろうか。  そんな事も込みで。  飼い主の居ないところで変な事をするなと思うが、今更だ。  そもそも、姿が無くともあの死神は視ているだろう。  おおむね人外とはそういうものだ。わざわざ自分が言う事も無い。  
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