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手洗いからの戻りに、暗い廊下を歩く。
廊下の先では、明かりが玄関の擦りガラスを抜け、床へ青く散っている。
外を車が走っている。虫の声がする。そして途切れず続く、土手の向こうの川の音。
普段気にならない音も耳につく夜中。
刃もできるだけ静かに歩く。
彼女がいくら小さいとはいえ、足音以上は消しきれない。
宙が起きてぐずりだしたら、寝かしつけるのに時間がかかるのだ。
いや。
もし起きたら、エリックにさせればいい。一緒に寝ているというのは、まあそういうことだ。
思い直して、眠気を逃さないよう、瞼を下げる。
ふと、宙の部屋から何か聞こえた気がした。
寝言でも言ってるのかと思ったが、子供の声ではなさそうだ。
近づくにつれ、足下が冷える。
死神が戻ったらしい。
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