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刃が自室の前へ来る頃には、物音が聞こえ始めていた。
子供の寝返りにしては重そうな、ベッドがきしむ音と、くぐもった声。
たちまち蒼眼が凶悪に尖る。
「あンの死神……」
蹴り開けたい衝動をどうにか噛み殺し、唸る。
室内の様子はだいたい想像がつく。
一体何のために姿を消し、戻った途端に遊んでいるのか。
どちらにしろ、彼女をイラつかせこそすれ、実害は無い。首を突っ込むことでも無い。
とりあえず彼女にとっては、夜が静かであればいい。
おとなしく寝させろ。
自室の扉に手をかけ、言葉を投げつけるごとく背後のドアを睨みつける。
不思議と、それきり静かになった。
少なからず溜飲を下げた刃は、しかし、すぐ忘れたようにあくびをし、部屋へ戻った。
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