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「先生って、だれ?」
「は?」
ソファの向こうから唐突に訊かれ、刃は顔を上げる。
宙が肘掛けにあごを乗せ、退屈そうに寝そべっていた。
隣のエリックはといえば、何やら絵本を開いて難しい顔をしている。
そろそろ昼寝の時間だろうと思いながら、早々に畳んだ洗濯物を置いた。
「先生って、何の」
エリックに字でも教える気だろうか。
しかし、続きは予想外なところに来た。
「刃は、がっこうでまほう習ったんでしょ?先生は?」
「はァ?」
この間の事件以来、魔法だ何だと言わなくなっていたのに。
一体今度はどんなTV番組を見たのか。
しかし刃は顔をしかめた後に、もっともらしく腕を組んでみせた。
「オレのセンセはセンセだ。だいたい何でも出来る。家事以外」
「ほんとに? お城とか作れる?」
「作れるだろ。見たこと無いけど」
「何で?」
「魔法使いだからな」
「まほうつかい!」
宙がたちまち興味津々に身を乗り出す向こうで、エリックが目を丸くした。
見上げた刃は片眉を上げる。
「お前、信じて無ェな? 死神と住んでて何で魔法使いが信じらんねえんだよ」
明らかにむっとしたようだが、宙はお構いなしだ。
「ねえねえそれじゃ、刃は、お花、出せる?」
「は?
……オウ坊主、ちょっと折り紙持ってこい」
刃が首を傾げながら手を出せば、不満げに首を振られた。
「ちがう。ぼくのうえきばち」
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