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指されたのは、ベランダの小さな植木鉢。
そういえば増えているのに気付いて以来、様子は見ていなかった。
「まだ何にも出ないんだよ? うめたのに」
「種か? つーか何植えたんだ?」
「お花」
「……そうか」
通訳を求めて見上げるが、エリックも適当な言葉を見つけられないらしく、戸惑っているようだ。
何を植えたか知らないが、あれから一週間は経っている。
「ちょっと見せてみろ」
外へ出れば、大小の植木鉢たちはしっかり水をもらったらしく、盛大にベランダを濡らしている。
小さな鉢ののっぺりした表面は、たしかに芽のひとつも見えない。
というか、平らすぎる土は、庭の泥を入れただけのようで、どうもままごとの延長にしか見えない。
触れば、指にべったりと粘土質の土が付いた。
「まいにちお水、あげてるのに」
宙は口をとがらす。
判断しかね、手を払いながら思いつきを言ってみる。
「……世話のし過ぎで、種がおぼれてるんだろ。一日、水やるのやめてみろ」
「わかった!」
あっさり納得したようで、宙は部屋に戻って行った。
小さな鉢を見下ろす。1日くらいでは水切れしそうには無いから、大丈夫だろう。
何を植えたのかは知らないが。
大きな方の鉢は大きく葉が広がり、白や紫の花盛り。
比べて見れば、宙が不満に思うのもよく分かった。
「ま、そのうち生えんだろ」
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