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  ***  今夜も部屋に二人きり。  エリックは、ほとんど読めない「ひらがな」で書かれた絵本を、膝へ倒した。  宙はとっくにお絵かきに夢中になっていて、綴られた画用紙へ色鉛筆をふるっている。  何か歌いながら描いているから、楽しそうだ。 「……何?」  床へ落ちた紙たちには、花や葉らしき形や、原色の雲のようなものが見える。  近くに寄れば、何とか人間の形をした絵に、髪が足されているところだった。 「エリックとかっか」  おそらく、黒い頭が自分で灰色が主だ。  間で茶色が乗っているのは宙だろうか。  実は全く違うかもしれないけれど、嬉しく口元がゆるむ。 「どうして、一緒に?」  ぼくがかんがえたんだよ、と宙が得意げに笑う。 「あのね、エリックとかっかは、なかよし! 姉さんは姉さんだけど……」  そこで何故かくすくす笑う。  様子をうかがうようにあたりを見回して、エリックに顔を近づけた。 「刃はね、ぼくのおともだち」  とっておきの秘密を明かしたように、宙は笑う。  なのに自分は、ぐっと、反射的に何かを堪えていた。  「おともだち」。  意味は分かる。友人と言われて、何の不思議も無いはずだ。  あのひとは宙にとって、親でもきょうだいでも無いのだから。  
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