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今夜も部屋に二人きり。
エリックは、ほとんど読めない「ひらがな」で書かれた絵本を、膝へ倒した。
宙はとっくにお絵かきに夢中になっていて、綴られた画用紙へ色鉛筆をふるっている。
何か歌いながら描いているから、楽しそうだ。
「……何?」
床へ落ちた紙たちには、花や葉らしき形や、原色の雲のようなものが見える。
近くに寄れば、何とか人間の形をした絵に、髪が足されているところだった。
「エリックとかっか」
おそらく、黒い頭が自分で灰色が主だ。
間で茶色が乗っているのは宙だろうか。
実は全く違うかもしれないけれど、嬉しく口元がゆるむ。
「どうして、一緒に?」
ぼくがかんがえたんだよ、と宙が得意げに笑う。
「あのね、エリックとかっかは、なかよし! 姉さんは姉さんだけど……」
そこで何故かくすくす笑う。
様子をうかがうようにあたりを見回して、エリックに顔を近づけた。
「刃はね、ぼくのおともだち」
とっておきの秘密を明かしたように、宙は笑う。
なのに自分は、ぐっと、反射的に何かを堪えていた。
「おともだち」。
意味は分かる。友人と言われて、何の不思議も無いはずだ。
あのひとは宙にとって、親でもきょうだいでも無いのだから。
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