3人が本棚に入れています
本棚に追加
ばん、とドアが開けられた。
見なくても分かる。
せっけんと湯の香り。タオルをかぶったままの、風呂上がりのあのひとだ。
「オイコラ寝ろガキども」
「あ、刃! あのね、かっかとエリックとぼく、かいたんだよ!」
「オレは」
「無いよ?」
「何でだよ」
さっきの口まねのままに返され、宙はたちまち大笑いしている。
そんな宙を寝床へ追い立ててる姿を目にして、エリックは腹をおさえる。
この人は、宙のことを何だと思っているのだろうか。
見下ろす。
すぐ視線に気付かれ尖った目を向けられたが、エリックは思ったままを言った。
「あなたは、何、です?」
「はア?」
たちまち眉間にしわを寄せられた。
「ひとの事言ってる時間か。坊主に夜更かしさせてんじゃねえよ。さっさと寝ろ」
宙の横を指される。
ベッドでは、それが当たり前のように宙が待っていて。
発す言葉が見つからないエリックは、色々と飲み込まされた心地で、立ち上がった。
すぐに部屋を出ていく、小さな背中を睨む。
あのひとに言われたから動くんじゃない。
宙が、呼んでいるから。
最初のコメントを投稿しよう!