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  「……閣下」  耐えかねたエリックが起き上がり、少し青ざめた様子で主を見た。  白銀の巻き毛が僅かに揺れ、向けられた瞳はもう笑んでいる。 「ああ遙霞。案ずるな、この女が浅薄な事を言っているに過ぎん」 「テメェいきなり戻って蒸し返しといてソレか。大概にしろよ」 「弁えろ。宙が目を覚ます」  そしてまた空気が冷えるものだから、エリックはベッドから降りるべきかどうかさえ分からなくなり、小さくなる。  逡巡していると、視線を切った主の姿が消えた。  次の瞬間には、ふわりと薔薇が香り、優しい重みが肩へ乗った。  間近に穏やかな声がする。 「新しい事を試みたか。良い事だ」  主の指に唇をなぞられ、エリックは硬直した。  何の許しも無く食事をしていること、主がそれを知っているという事。  そのせいで、これから何か起こるとしたら。  それはきっと自分の我儘のせいだ。  今更ながら青くなる。  だが主の言葉に、咎める気配は無い。 「何を恐れる。宙は喜んでいただろう」  微笑まれ、ふぅと頬に熱がのぼる。それを楽しむように、主は更に笑んだ。 「後でゆっくりと聞こう」
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