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「あのね、エリックはね、おにいちゃんでいい?」
また言い始めたか。
通りすがりに宙の声を聞きとがめ、刃は足を止めた。
半開きのドアからのぞけば、楽しそうな宙と、戸惑っているエリックが見えた。
また絵本を見ていたところのようだ。
存外嬉しそうに照れている死人に、刃は瞼を半分下げる。
喜んでどうする。
窓際の二人に近づき、気付いた宙を見上げた。
「坊主、今度は何やってんだ」
「エリックがおにいちゃんってこと!」
「……はぁ。
じゃあ、お前のネエさんはコレより上か?」
「なんで? 姉さんは姉さんだよ?」
そして何故か宙は、思い出し笑いのように、両手で口を隠した。
よく分からないが、宙の中ではそういう遊びになっているらしい。
「よくわかんねえな」
「ひみつ! エリック、言ったらだめだよ!」
そして、お花とってくるね、と走って出ていった。
秘密の中身は気になるが、口止めされた当のエリックはぼけっとしている。
それでも宙を追いかけてみるのか、本を閉じて立ち上がった。
つついてみるか考え、やめる。そろそろ洗濯が終わる頃だ。
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