天使を泣かせた日

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姫華に背中を目一杯押してもらったんだ。 ここで尻込みしていたら藤堂の名が泣くよ。 電話を切ってメールを送信。 きっと姫華からの電話の後にでも見るだろう。 静かになった部屋で、ソファーにゆっくり体を沈めた。 するとポケットに硬いもの。 そうか、ペンダントと一緒に渡そうと、ここに入れたんだっけ。 お揃いのピアス。 結局姫華には渡せなかった。 形のあるものは、思い出も残ってしまうから。 俺との思い出は邪魔になるだけ。 さてそろそろ俺も、藤堂家の一員として、そして男として。 『欲しいものは必ず手に入れろ』 重荷だった家訓と向き合うときが来た。 .
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