321人が本棚に入れています
本棚に追加
姫華に背中を目一杯押してもらったんだ。
ここで尻込みしていたら藤堂の名が泣くよ。
電話を切ってメールを送信。
きっと姫華からの電話の後にでも見るだろう。
静かになった部屋で、ソファーにゆっくり体を沈めた。
するとポケットに硬いもの。
そうか、ペンダントと一緒に渡そうと、ここに入れたんだっけ。
お揃いのピアス。
結局姫華には渡せなかった。
形のあるものは、思い出も残ってしまうから。
俺との思い出は邪魔になるだけ。
さてそろそろ俺も、藤堂家の一員として、そして男として。
『欲しいものは必ず手に入れろ』
重荷だった家訓と向き合うときが来た。
.
最初のコメントを投稿しよう!