一億円が僕の手に

2/2
前へ
/4ページ
次へ
 狂気に満たされ笑う奴が一人。  恐怖に支配され震える奴が一人。  強欲に身を任せて啼く奴が一人。  病魔に呑まれて命が尽きかけてるあいつが一人。  どいつも、僕が過去に関わった人物だ。  カネは人を変える。その言葉はどこまでも真実であり、否定されることはない。尽きることのない欲望を覚えたら最後、堕ちるとこまで落ちていく。そう、今の僕のように。  嗚呼。可哀想な奴らだ。  僕が彼らを助けることが出来たら良かったのに。  嗚呼。僕はなんて無力な奴なんだ。  たかが一万円に溺れて彼らを陥れてしまった。  何回目だろう。人を裏切ったのは。  ふと、鞄を見た。  鞄の中には一億円があった。  今まで騙した奴らから奪った金だ。  ふと、思い出した。  カネと無縁だった頃の僕達を。  無垢な笑顔を浮かべて楽しそうにしていた僕達を。  僕は一億円を視た。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加